『ドント・ウォリー・ダーリン』(2022)考察&レビュー:完璧な生活に隠された夫の秘密、真実とは?
極限のユートピアスリラー
ハリー・スタイルズと「ミッドサマー」のフローレンス・ピュー主演、ミッドセンチュリーモダンのおしゃれなユートピアが徐々に崩壊していく甘くて怖いスリラームービー。この完璧な世界の裏に隠された真実とは。
『ドント・ウォリー・ダーリン』について
『ドント・ウォリー・ダーリン』は、元ワン・ダイレクションの人気アイドル、ハリー・スタイルズと『ミッド・サマー』のフローレンス・ピューがダブル主演で話題となった作品。恋愛映画のような甘いパッケージですが、極上のスリラー映画に仕上がっています。
監督は、バニー役として出演もしていたオリヴィア・ワイルド。親類にジャーナリストを多く持つ彼女は100人のセクシーなアメリカ人に選ばれるなど華やかなルックスを持つ演者としても活躍しながら、2019年『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で長編監督デビューし、大絶賛されました。
ハリー・スタイルズといえば2023年のグラミー賞受賞を遂げ、アイドルだけじゃないアーティストとしての地位を確実のものとした今や世界で最も愛される男といっても過言ではない。
Aoring家の家族が大のワン・ダイレクションファンだったこともあって彼の存在はもちろん知ってたけれど、俳優としての姿はこれが初見でしたが、なんだか初々しく感じる演技がとてもキュートでした。
物語は裕福な郊外の住宅街。
ここではビクトリーという企業に勤める人々が家族とともに最高の環境で暮らしているユートピアのような街。彼らは贅沢な家に暮らし、いい車に乗り、美しい妻たちは夫の留守中に家中をピカピカにし、週末は華やかなパーティーが開催される、そんなオールド・アメリカの理想を具現化したような生活を送っています。
しかし、ある一人の女性の告発から主人公のアリスはこの生活、そして夫の仕事に疑問を持つようになっていきます。夫は一体何の仕事をしているのか?なぜこの街は砂漠に囲まれた場所に存在しているのか…?
そんな疑問を持つ中、ある日アリスは飛行機が砂漠に墜落するのを目撃します。バスを降りて急いで駆けつけるアリス。しかし、その道には「立ち入り禁止」の看板が。
無我夢中で飛行機の墜落場所を目指すアリス。すると、砂漠の中に不思議な建物を見つけます。ここは一体何なのか、想像もつかない結末が待っていました。
ミッドセンチュリーモダン
ドント・ウォーリー・ダーリンは、住宅をはじめとする映画全体のビジュアルがミッドセンチュリーモダンの影響を受けています。
とくに、ビクトリープロジェクトのリーダーであるフランクが、世界で最も有名なミッドセンチュリー住宅の一つであるカウフマンハウスに住んでいる様子が描かれています。カウフマン邸の外観は映画やテレビで何度も紹介されていますが、『ドント・ウォーリー・ダーリン』は、この邸宅で撮影されたシーンが初めて登場し、めったに見られないインテリアもいくつか覗くことができます。
本作は、甘い新婚夫婦の完璧な生活を徐々に剥離し、その本性を露わにしていくストーリー。砂漠を彷徨って”本部”にたどり着いてしまったアリス、ここから一気にスリラーめいていきます。
本部にタッチしたときに気を失って、気づけば自宅で眠っていたアリス。この時点では分からなかったのですが”本部”は、この仮想空間からのログアウトだったことが後から分かります。
素晴らしきユートピア、実はバーチャルの世界。夫たちはビクトリー社と何かしらの契約を交わし、妻となるべき女性を仮想空間に閉じ込め、自分たちもまたそこでは完璧な夫として”暮らす”ことができているのでした。
バニーだけはその真実を知っていたようですが、他の妻たちはそんなことを知らず、アリスもまた同じように何も知らず、ジャックと完璧な夫婦として暮らしていました。
しかし、アリスはかつて勤務医として働いていた女性で、ジャックはそんなアリスに食わせてもらってるヒモみたいな存在。ヒゲも剃らずに冴えない姿の男性でした。
バーチャルの世界でアリスはそんな過去も忘れさせられ、ビクトリーの作り出した世界を真実だと思いこんでいます。ジャックは完璧な夫で、自分は甲斐甲斐しく夫の世話をする謙虚な妻として…。
ビクトリー社が何をしている企業なのか詳しくは言及もなく謎のまま。夫たちはおそらく毎日ログアウトして何かしらの仕事をさせられていたのでしょう。
眠ったまま…?
毎日仕事に行くためにログアウトする、つまりバーチャルの世界から現実世界に戻っていく夫たちと違い、妻たちはずっとバーチャルの世界で生きている…しかも半ば強制的に眠らされながら。ってことは、女性たちは眠ったままってことですよね?
どんなにいい生活をバーチャルで過ごしてても、肉体は衰え、筋力も低下するだろうし、時間が経てば経つほど恐ろしい未来が待ってそうな怖さがあります…。あのままバーチャル世界が崩壊しなければ、どうなっていたんでしょうか。
ツナ缶
アリスがディナーパーティーで作ろうとしていたツナサラダ。ジャックはそれに強く反発しているシーンがありますが、実はビクトリーの仮想世界からログアウトしたジャックがツナ缶で食事をしているシーンが映っています。
アリスの鼻歌
映画の中でアリスが口ずさみ、最終的に真実を知るきっかけとなる曲は、ハリー・スタイルズのオリジナル曲です。
夢の中では文字が読めない?!
アリスがマーガレットの医療ファイルを開くと、すべて黒塗りされていました。これは、夢の状態では文字を読めないという説があるためだと考えれています。
科学者や夢の専門家は、読むこと、書くこと、そして言語のほとんどの側面が、夢を見ている間はほぼ不可能だと考えています。睡眠中も脳は比較的機能していますが、ある部分の活動ははるかに低下しているのだそうです。
不思議の国のアリス
主人公の名前がアリスであること、彼女が知らず知らずのうちに入り込んでしまうファンタジーの世界、窓や鏡が目立つこと、そして最後に彼女の隣人のバニーが象徴的な白ウサギへの微妙な言及をするなど、『不思議の国のアリス』を明確に参照している部分がたくさんあると考えられています。
影響を受けた作品
オリビア・ワイルドは、本作に影響を与えた作品として『インセプション』(2010年)と『トゥルーマン・ショー』(1998年)を挙げています。
『インセプション』
クリストファー・ノーランが監督・脚本、レオナルド・ディカプリオ主演、2010年公開のSFアクション映画。
夢を見ている間に潜在意識から貴重な秘密を盗み出すスペシャリストのドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)の才能は重宝される一方で国際指名手配されるリスクがあった。そんな彼が失った人生を取り戻すためには「インセプション」と呼ばれるおよそ不可能とされる任務を遂行する必要があった。
映画の舞台が人の潜在意識、または夢、夢の中の夢というトンデモない世界で自分がどこにいるのか分からなくなる!
『トゥルーマン・ショー』
ジム・キャリー主演の1998年サイコSF映画。離島・シーヘブンで保険会社に勤めるトゥルーマン・バーバンクは保険会社の平凡なセールスマンだが島から一度も出たことがなかった。しかし、自分の人生が少し変だと思い込み始める。その人生、生活とは実は”演出”されたものだった…
『ドント・ウォリー・ダーリン』概要
- 製作国:アメリカ
- 製作年:2022
スタッフ
- 監督:オリヴィア・ワイルド
- 脚本:ケイティ・シルバーマン
- 製作:ロイ・リー、ケイティ・シルバーマン、オリヴィア・ワイルド、ミリ・ユーン
メイン出演俳優
その他の出演俳優
- ジェンマ・チャン
- キキ・レイン
- ニック・クロール
- クリス・パイン
まとめ
今回は、良質なユートピア崩壊SFスリラー「ドント・ウォリー・ダーリン」についてレビューしました。
フローレンス・ピュー主演「ミッドサマー」のレビューもしてます!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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