アメリカン・ホラー・ストーリー シーズン10:2つの物語「赤い海-Red Tide-」-(2021)キャスト&考察レビュー
こんにちは!aoringo(@horror_apt)です。
世界中で大人気のTVドラマシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」シーズン10『2つの物語』の前半ストーリー「赤い海-Red tide」-について考察・レビューします。
『Glee/グリー』をはじめ数々の人気ドラマを世に送り出してきた人気プロデューサー、ライアン・マーフィーが手がけており、シーズンごとに物語の設定や俳優が入れ替わるアンソロジータイプのホラードラマシリーズ。
テーマは多岐にわたり、アメリカンホラーの定番である呪われた家に始まり、精神病棟、魔女、サーカスの奇人たち、経営難のゴーストホテル、呪われた土地、カルト集団、サマーキャンプの悲劇などがあります。
シーズン10『2つの物語』について
テレビドラマシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」シーズン10は初の2本立て構成。コロナの影響で撮影・公開が予定していた2020年から大幅に遅れて2021年夏に配信が開始されました。
前半「赤い海」は、あらゆる芸術の才能を開花させるが恐ろしい副作用がある謎の”黒い薬”の物語、そして後半「死の谷」は、アメリカに実在する多くの陰謀説や宇宙人に関する情報を元にした物語となっています(^^)/
この記事は前半「赤い海」についてかいています。エイリアンの出てくる後半「死の谷」についてはこちらの記事でまとめています。
製作について
ライアン・マーフィーとブラッド・ファルチャックが制作したFXのホラー・アンソロジー・テレビシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」の第10シーズン。第1部「赤い海」が配信開始するやいなや非常に良い反応があり、一部の評論家はシリーズの復権と賞賛したそうです。
しかし、「赤い海」のフィナーレは、その急ぎすぎで唐突な終わり方に対して非常に否定的な評価を受けたそうで、後半の「死の谷」においてはストーリー、脚本、エンディングに対する批判で、全体的に評価が分かれたシーズンとなりました。
評価が別れた本作ですが、2部構成でオムニバス形式に挑戦したのは、これはこれでコロナで撮影が伸びた間に合わせと思えば十分おもしろかったです!
逆にこの2つの物語を1シーズンでされても困ったかもしれない…。結果的にちょうどよかったのでは?
エヴァン・ピーターズがプロデューサーに
本作では初めて、アメホラ常連俳優であるエヴァン・ピーターズがプロデューサーとしてクレジットされています。同様に、サラ・ポールソンが同番組のエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされるのも今回が初めてでした。
「赤い海」出演俳優
その他の出演俳優
この作品に登場する登場人物と出演俳優を全解説しています。
「赤い海」エピソード一覧
エピソード後半は「死の谷」で紹介しています。
- 1.恐怖の岬-“Cape Fear”
-
監督:ジョン・J・グレー
脚本:ライアン・マーフィー&ブラッド・ファルチャックハリー・ガードナーと妊娠中の妻ドリス、娘のアルマは、3ヶ月の予定でニューヨークからマサチューセッツ州プロビンスタウンに短期移住でやってきます。ドリスとアルマが散歩に出かけたところ、トレンチコートを着た青白い男につきまとわれます。バールソン署長は、プロビンスタウンは安全な場所であり、彼らは麻薬中毒者の可能性が高いとガードナー夫妻に説明しました。
ある夜、ハリーはミューズという名の地元のバーに出かけ、そこで有名な小説家のベル・ノワールと劇作家のオースティン・ソマーズに出会います。ハリーはプロビンスタウンでパイロット版の手直しをしているため、2人と芸術やインスピレーションについて話すことができて嬉しく思いました。しかし、その後ハリーが家に帰ると、青白い男が襲ってきます。ハリーは正当防衛でその男を殺してしまうのでした。翌日、ガードナー夫妻はプロビンスタウンを離れることを計画しますが、その前にハリーはオースティンから、作家の悩みを解決する「治療法」を約束する電話を受けます。オースティンはハリーに、”ミューズ”と名付けられた黒い錠剤の入ったビニール袋を渡します。ハリーはそれを飲むのをためらいますが、プロビンスタウンに残ってパイロット版を完成させるようエージェントと電話で話した後、いい作品をかけず悩んでいた彼は、娘アルマの前で1錠飲み干すのでした。
- 2.蒼白-“Pale”
-
監督:ロニ・ペリステレ
脚本:ティム・マイナー黒い薬の効果はすぐ現れ、彼はたった4時間でパイロット版を仕上げることができました。ハリーのエージェントであるアースラは、自分の番組がNetflixに買収され、ホアキン・フェニックスが無料で出演したいと言っていると通告します。血の味を覚え始めたハリーは、その直後に誤って指を切ってしまったドリスの指を無我夢中で吸い込み妻に不審に思われます。
オースティンは、「ミューズ」と名付けたその錠剤が、「才能のない人」を青白い怪物のような生物に変え、「才能のある人」に血の渇きを生じさせる副作用があることを彼に説明しました。一方、脚本家を夢見るミッキーは、ミューズを飲もうとしますが、プロビンスタウンで結核菌カレンと呼ばれる女に必死で止められます。カレンの説得にもかかわらず、ミッキーはミューズを服用してしまいます。また、ハリーの娘アルマはバイオリンの難曲を弾きこなしたいと、父の薬をこっそり飲んでしまいます。その後アルマは、母ドリスが自分と父ハリーの才能に嫉妬してプロビンスタウンから去ろうとしていると非難し、冷酷にこき下ろします。ドリスは怒りと悲しみでアルマを追い出しますが、アルマは一人で家を飛び出し散歩に。ドリスは必死でアルマを探しますが、墓地で動物をむさぼり食っているアルマを見つけるのでした。
- 3.渇き-“Thirst”
-
監督:ロニ・ペリステレ
脚本:ブラッド・ファルチャックハリーの様子を見にプロビンスタウンにやってきたエージェントのアースラ。バー「ミューズ」では、ベルとオースティンの演技を侮辱します。翌日、ミッキーはアースラに自分の脚本を読んでくれるよう頼みます。ミッキーの才能(薬によるもの)に唖然とするアースラに、彼は薬のことを話しました。
ミッキーはベルの家に忍び込み、彼女のために薬を盗み出します。一方、ベルとオースティンはアルマが薬を飲んだことを知り、ハリーに銃を突きつけて脅します。ベルはミッキーにアースラを殺すよう命じますが、代わりに彼はアースラを科学者(錠剤の生みの親)の家に連れて行き、錠剤の流通について議論させ、アースラは科学者に大きなビジネスを持ちかけます。その後、科学者はベルとオースティンに対し、彼らがあまりにも多くの問題を引き起こしているからとアースラ、ミッキー、ハリー、アルマ、そしてドリスを殺すよう指示します。一方、ハリーはアルマがバールソン署長を殺してしまい、アースラもそれに気づいていながら何事もないように過ごしているのを発見するのでした。
- 4.血のビュッフェ-“Blood Buffet”
-
監督:アクセル・キャロリン
脚本:ブラッド・ファルチャック5年前、科学者がプロビンスタウンに移り住み、薬の被験者を探すためにミッキーに報酬を払い依頼します。ミッキーの友人で歌手志望のヴラドは、ミッキーから勧められた薬を飲みますが、体調を崩し始めました。
髪を失った彼は科学者に詰め寄りますが、あなたは才能がないから薬の効果に耐えられないのだ、と言われてしまいます。同じくミッキーから薬を紹介されたベル・ノワールは、一晩で本を書き上げる才能を発揮し、その流れで不仲だった夫を殺してしまいます。2年後、ヴラドはすっかり怪しげな青白い生物に変身していました。ベルはミューズでオースティンがドラッグで口パクのショーを披露するのを見て、彼に錠剤をすすめます。その夜、彼らは仲間のドラッグクイーンの家に行き、一人を除いて全員を惨殺しその血を飲みました。生き残ったドラッグクイーンは逃げて森に入りますが、背後からヴラドが飛び込んできて彼女を殺害するのでした。
- 5.ガス燈-“Gaslight”
-
監督:ジョン・J・グレー
脚本:ブラッド・ファルチャック&マニー・コトドリスは男の子を出産しましたが、薬のことがばれないようにハリー、アルマ、アースラによって薬漬けにされました。アルマはやがてドリスに真実を打ち明け、ママも”黒い薬”を飲んで仲間になるように説得し飲んでしまいます。
しかし彼女は副作用に苦しみ、生まれたばかりの子供を殺そうとしたため、ハリーにバスルームに閉じ込められます。母鳥すには才能がなかったのです。一方、ベルはカレンに近づき、ガードナー家の赤ん坊を盗むよう命じられます。ガードナー家に侵入するカレンとミッキーですが、変身したドリスに恐怖を感じたカレンは任務を放棄。逃げ出した彼女を、青白い人々の大群が追い詰めます。ミッキーはカレンに”黒い薬”を飲むか、青白い人々に食われるかの最後通達を突きつけます。カレンは襲われる寸前に否応なしに服用するのでした。翌日、ハリーは怪物になってしまった妻ドリスを解放し、青白い生物としてプロビンスタウンに放し飼いにすることに。海岸では、カレンがミッキーを襲って食べ、絵を描いた後、手首を切って海に入り自殺するのでした。
- 6.冬の死-“Winter Kills”
-
監督:ジョン・J・グレー
脚本:ブラッド・ファルチャック&マニー・コトプロビンスタウン市議会議員で有名なインテリアデザイナーのホールデン・ヴォーンは、バールソン署長の死体が漁師に発見されたことを知り、ベルとオースティンにハリーとアルマの世話をするように命じます。ガードナー家では、ハリーが娘アルマに、自分たちが薬を飲むのをやめなければならないと伝えます。
言い争っているうちに、赤ん坊のイーライが誘拐されてしまいます。ハリーはイーライのベビーベッドで、ベルからの脅迫状を見つけます。ハリーとアルマがベルとオースティンに立ち向かっている間、アースラは青白い人々の大群を集結させることに成功。ベルとオースティンを襲撃させ、その後アースラは青白い人々を銃殺しました。次にアルマは薬を止めさせようとする父ハリーを殺し、彼を餌食にします。
3ヵ月後、アルマはイーライ、アースラ、科学者とともにロサンゼルスで贅沢に暮らしていました。大学で、アースラは脚本を書くクラスの参加者に薬を紹介し拡散させます。アルマはクラシック・オーケストラの最終選考に残った仲間に侮辱されたので、殺してしまいます。その直後、薬が大衆に配給され、ロサンゼルス中に混乱と暴力が起こります。アースラの行動に不満を抱いた 科学者は、イーライと共に町を出ることを決意するのでした。
「赤い海」考察&トリビア
制作秘話
公開前に、デジタルライターのニック・ロマノは、この作品では「マコーレー・カルキンがライアン・マーフィーの不条理な世界に完璧にフィットする狂気の要素を手に入れた」と語り、また「キャシー・ベイツとの狂気のセックスシーン」を予告していました。
キャシー・ベイツは実はベル・ノワールを演じる予定だったそうですが、フランセス・コンロイに代わったということです。(理由はコロナの影響によるものだったそうです)
あの映画作品の影響
『恐怖の岬』Cape Fear(1962年)
第1話のエピソードタイトル”Cape Fear(原題) “は、マーティン・スコセッシ監督の1991年公開映画『Cape Fear』と同じであり、この作品にはアメホラシーズン1〜4でメインキャストを務めたジェシカ・ラングが出演しています。
ジェシカは6シーズン前にAHSへの出演を(厳密にはシーズン8で過去演じたキャラとして少し出演しているものの)正式には終えています。
しかし、ジェシカ・ラングという女優がいまだにアメホラの象徴として存在し、アカデミー賞受賞女優への制作陣のオマージュであることは間違いないといえそうです(^^)/
『シャイニング』(1980年)
スタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』(原作:スティーブン・キング)では、作家がライターズ・ブロック(作家が新しい作品を生み出す能力を失ったり、創作上の低迷を経験したりする状態)を解消するために、冬の間、人里離れた町に家族を移住させ、その結果恐怖の展開が訪れます。
また、ハリーがノートパソコンでタイプしているショットは、『シャイニング』でジャックがタイプライターに向かう姿を彷彿とさせました。
『死霊伝説 セーラムズ・ロット』Salem’s Lot(2004年)
こちらもスティーブン・キングの小説から抜粋されて映画化されたもので、小説を書くために故郷に戻った作家が、その町で深刻な吸血鬼問題が発生していることを発見する物語です。
『ジョーズ』(1975年)
Ep2「蒼白-“Pale”」でミッキーとカレンが映画『ジョーズ』について話しているシーンがあります。その一部を紹介(^^)
ジョーズの登場人物クイントは漁師であり、長い間サメを捕獲してきた。サメにだって家族はいるだろう、ジョーズの兄弟や親友を殺したかも知れない。人を襲ったのはクイントを呼び戻すためかもしれない。
さらに、『ジョーズ2』はフロリダで撮った駄作であるとも言っちゃってます。
1960年代に実在した連続殺人鬼ヴァンパイア
part.1「赤い海」の物語は、実は1960年代に実際に起きたケープコッド・ヴァンパイアという実話にインスパイアされたものだと言われています。
この事件は、1969年ニューイングランドで起きた連続殺人で、逮捕されたアントン・チャールズ・”トニー”・コスタは、犠牲者の首に噛み跡を残すという特徴から「ケープコッド・ヴァンパイア」の異名がありました。コスタはマサチューセッツ州の町で8人の女性を殺害した疑いがありましたが、実際に起訴されたのは2件に留まっています。
また、コスタはジャンキーであったともされており、少なくとも4つの殺人を犯した際には覚醒剤でハイになっていたと言われています。”黒い薬”の着想もここと関連していることは否めません。
プロビンスタウンで結婚していたあの登場人物とは
part.1「赤い海」の舞台となったマサチューセッツ州プロビンスタウンですが、実はシーズン2「精神科病棟」の登場人物、キット・ウォーカー(エヴァン・ピーターズ)とアルマ・ウォーカー(ブリットン・オールドフォード)が結婚した場所でもあります。
また、ハリーの娘の名前が”アルマ”であるのも偶然ではあるのでしょうが、ちょっとした関係を見出すことができます(^^)/
連続殺人はヴァンパイアによるものか、カルトによるものか?
Ep3で、バールソン署長がアルマに「この殺人はカルトの仕業なのか、それとも血液の病気を持つ人々の仕業なのか」と尋ねるシーンがあります。
カルトの話はシーズン7「カルト」の一連の事件について発言しているのかもしれない。また、「血液の病気」というのは、シーズン5「ホテル」を指しているのかもしれません。
“吸血鬼 “のモンスターたちは、古代の血の苦悩の結果であり、今シーズンの「ヴァンパイア」同様、「ホテル」のヴァンパイアも定期的に人間の血を吸う必要があり共通点があります。
ただし、本作では、吸血鬼になってしまうのは科学者が開発した薬の副作用であり、「ホテル」の場合は「吸血鬼ノスフェラトゥ」の監督F・W・ムルナウからの感染でした。
これらに関連性があるのかどうか…は謎です(^^)/(科学者がその成分を薬に調合している可能性はありますが、「ホテル」のエピソードの中で、才能がない者が怪物になるようなくだりもありませんでした)
さすがに関係ないと思います…
バーガーキングのないプロビンスタウン
物語のなかで、デニス・オヘア演じるホールデン・ボーンが「この町にチェーン店の展開もさせないようにしているからバーガーキングはない」といってます。
実際にマサチューセッツ州プロビンスタウンにはバーガーキングはなく、代わりに「バーガークイーン」というお店があるそうです(^^)/
『赤い海』のまとめ
いかがでしたか(^^)/
以上、アメホラシーズン10「2つの物語」の考察&レビューでした!
冒頭でも述べたとおり、このシーズンは賛否の分かれる結果となったそうですが皆さんはどうでしたか?私は、これまでのシーズンのように盛り上がることは確かになかったのですが、コロナの影響もある中で挑戦的な構成であり、攻めのスタイルで色々なことにトライするアメホラ制作陣の心意気は大いに買いたいと思いました(^^)/
マコーレー・カルキンのスクリーン復活
個人的にはやっぱりマコーレー・カルキンの復活がとても嬉しかったですね。私世代ならクリスマスにはテレビで流れる「ホームアローン」を幾度となく見てきたという方も少なくないのではないでしょうか。
そんな彼は、もっとも成功した子役としてかつてもてはやされましたが、その後チラホラ作品に出るものの、2000年頃からは俳優業を離れ、たまにゴシップ誌にイケてない姿を晒される程度の存在になってしまいました。
そして、40歳になった彼がアメリカン・ホラー・ストーリーに参加するというニュースはアメリカでは当然、日本でも驚いた人は多かったでしょう。私もその一人です。しかし、世間の彼への期待は低かったそうです。
なぜならマコーレーは長い間まともに映像作品への参加をしてこなかったんだから。しかし、その結果はどうでしたか?ミッキーは、他の常連俳優に負けない存在感を叩きつけ、ここにあり、という印象をしっかりと残したのです。
彼が演じたミッキーという人物は、非常に人間らしくてピュアでした。それなりに向上心や野心がありながら、カレンには優しくて成功した後も彼女への態度を変えない、突拍子もないキャラクターが定番となっていたアメホラに異端のように存在していました。
今後、彼が映画やドラマにどのように復活するのかは分かりませんが、私はマコーレー・カルキンという俳優をもっと見たいと強く思いました(^^)/子役として成功した後、明らかな低迷、そしてスクリーンから消えた彼だからこそできる演技をぜひ見たいですよね。
予告トレーラー:赤い海編
後半「死の谷」の考察&レビュー
こちらにまとめています。
月額料金 990円(税込)
年額だと9,900円(税込)でオトク!
ディズニープラスなら、アメリカン・ホラー・ストーリー全シリーズだけでなく、スピンオフのアメリカン・ホラー・ストーリーズ全シーズンも見放題です。
PC・スマホ・タブレット等1つのアカウントで4台まで同時視聴可能。家族共有もOK!
おすすめポイント
ディズニーの名作映画やドラマシリーズだけでなく、スターウォーズ全作品もオリジナルドラマも観られるのはここだけ!ホラー作品数はそこまで多くないものの、他の配信サービスにはない魅力あるコンテンツが楽しめます。
当ブログはホラー好きな管理人がにわか研究員としてホラー映画やミステリー小説などをマイペースに掘り下げているブログです。
Twitterでは新着情報とかを発信中。